コミュニティセントラル

Fandomは多様なコミュニティとwikiの集まっている場所です。現実や創作を問わず、ここにはさまざまな事柄に関する情報があります。いずれの場合においても、それに関わる個人や出来事を記録したり説明したりする際は、慎重に、そして適切に、なされる必要があります。

社会全体として会話が繰り返され変化し続けている文化的な話題について、このことは特に大切となります。ジェンダー・アイデンティティGender Identity/性自認/性同一性)は、そのような話題の重要な例です。私たちの社会は、ノンバイナリーやトランスジェンダーの人たちの排除をやめ、よりよく理解していこうと変わりつつあります。同時に、ポップカルチャーにおいてもまた、ノンバイナリーやトランスジェンダーの方たちを描いたり、ジェンダー・アイデンティティについて会話したりすることも増えてきました。

はじめに&本ガイドラインの目的[]

ノンバイナリーやトランスジェンダーの方たちの描写が増えるにつれ、Fandomでもそうしたキャラクターについてどのような議論や描写をすることが適切なのか、スタッフに質問が届くようになりました。Fandomのこういったコミュニティの方たちは、インクルーシヴで適切な言葉を使うことの大切さを認識しています。しかし、社会的認知が広がるにつれて、新しい用語が生まれたり、以前使われていた用語が使用されなくなったり、スティグマ化されたりすることが度々起こる現代では、時にどの言葉を用いるのが適切なのかを判断することが難しい場合があります。

これを理由に、Fandomは2021年の春に15人のメンバーからなるパネルを設置し、ジェンダー・アイデンティティに関して、どのようにコミュニティを導くのが最適か議論を重ねました。このパネルは多様な個人からなり、ノンバイナリーやトランスジェンダー・コミュニティの一員である人たちも含まれています。また、この話題について実際の経験もある外部専門家もパネルメンバーとして参加しています。

ここには、Fandomにおいて最も適切な慣習と、Fandomコミュニティにおいてジェンダー・アイデンティティに関する話題をどのように扱うべきかの指針が記されています。この文書は、このコミュニティのメンバーにとって教育的なガイドでありつつ、頻繁に挙げられる質問に対しての明確な答えを提示することが目的とされています。この文書は多くの事柄を含んではいるものの、全ての案件や質問を網羅しているわけではありません。更なるサポートが必要な場合は Fandomのスタッフにリクエストを送ってください。

また、この文書は更なる改訂が行われる場合があります。特にこれらの話題は丁寧な議論が日々なされ、より洗練され続けています。これらの議論に基づき、私たちのガイドラインもまた改訂がなされるでしょう。また、この文書の発表時には想定していなかった新たな例や FAQが改訂により追加されることも考えられます。

本ガイドラインで用いる用語の定義[]

まず重要なのは、「ジェンダー gender」のはっきりとした定義から始めることです。ここでは、Fandomのパネルメンバーの決定に従い、イギリス政府の用いている定義にならいます。

[ジェンダーとは、]「おとこらしさ masculinity」と「おんならしさ femininity」という類型に基づく、行動の様式や特性に関する社会的な構築。ジェンダー・アイデンティティは、その人に個人的かつ内在的な、自己に関する認識の一つである。それゆえ、ある人がアイデンティティを実感するジェンダーの類型は、その人が出生時に割り当てられたセックス("sex assigned at birth")と対応するとは限らない。つまり、ある個人は男性、女性、ジェンダーがない、あるいはノンバイナリーなジェンダーである、などと自己を認識しうる。

ジェンダーに関する会話や定義によっては、「セックス sex」に言及される場合もあります。セックスは、例えば解剖学的構造や、ホルモン、細胞、染色体などに観察される生物学的な差異を示すと、通常は理解されています。セックスはその人のジェンダー・アイデンティティと対応する場合もしない場合もあります。ただし、医療に関する会話を除けば、ジェンダーではなくセックスに言及する必要のある場面は殆どありません。

その他、本ガイドラインで用いる用語は、以下のようになります。

  • シスジェンダー (cisgender):人格的なアイデンティティやジェンダーに関する実感が、出生時に割り当てられたセックス[訳註 1]と対応する人を形容する[訳註 2]表現。
  • トランスジェンダー (transgender):人格的なアイデンティティやジェンダーに関する実感が、出生時に割り当てられたセックスと対応しない人を形容する表現。
  • ノンバイナリー[訳註 3] (non-binary):「男性」「女性」に限らない、場合によってはこのような伝統的な二元論的ジェンダー理解では説明することのできないジェンダー・アイデンティティ、またはそれに関すること。
  • インターセックス (intersex):セックスは、連続的な線分で理解される。この線分の両極は、伝統的に「男 male」と「女 female」と言及されてきた。インターセックスとは、この線分のいずれの端でもない、セックスに関する特徴や生殖に関する解剖学的構造のある人たちのことを広くあらわす表現である。なお、このスペクトラムのいずれかの端に近いセックスの人は、「ペリセックス perisex」や「ノン・インターセックス non-intersex」と表現される。ペリセックスの人たちの身体の発達の仕方と比較すると、インターセックスの人たちの生殖器や、ホルモン、体内の解剖学的構造、染色体などは多様でありうる。
  • トランジション/性別移行 (transition):ある人がトランジション中であるということは、出生時に割り当てられた性別ではなく、その人のジェンダー・アイデンティティに基づいた生活を始めた、ということを意味する。トランジションをしないトランスジェンダーの人もいるが、多くの人は人生のいずれかの地点でトランジションしている。トランジションの仕方は各当事者によって異なるが、服装、容姿、身体、名前、人称代名詞(she/her(彼女)、he/him(彼)、they/them[訳註 4])の変更などが例としてあげられる。
  • デッドネーム (deadname):トランスジェンダーの人がトランジション開始後に使用をやめた、出生時に与えられた名前。ただし、トランジションする人のすべてが名前を変更するわけではないことに注意する必要がある。
  • ミスジェンダリング (misgendering):ある人を、その人のジェンダー・アイデンティティに対応しない表現を用いて言及すること。特に人称代名詞や敬称[訳註 5]などを誤ることを通じてなされる。ミスジェンダリングは、頻繁に、トランスジェンダーの人への攻撃として用いられる[訳註 6]

表現のガイドライン[]

Fandomに情報を追加する際は、原則として、少なくとも次のことに気をつけることを呼びかけます。

  • キャラクターが明確に自称する場合を除いて、現在は好まれない二元論的な表現は避けること(例:「FTM」/「MTF」や「female-to-male」/「male-to-female」)。代わりに、トランス男性トランス女性ノンバイナリーなどといった、その人のジェンダーを受け入れる表現を選ぶこと。
  • 「女性を自認する」などといった表現は避け、「女性である」と表すこと。
  • 「人物〇〇の好んでいる人称代名詞preferred pronouns」という表現は、その人の代名詞が「事実」でないとか、それを尊重することが任意であるだとかといった印象を与えるため、これを避けること。代わりに、ただ「人物〇〇の人称代名詞は」などと表現すること。
  • トランスアイデンティティを説明する際、「誤った性別(sex)や身体に生まれた」などと表現しないこと。「出生時に割り当てられた性別 (AGAB)がジェンダーアイデンティティと一致しない」などと説明すること。
  • 「身体女性」や「生物学的男性」などといった表現は避け、「出生時に女を割り当てられた人 (AFAB)」や「出生時に男を割り当てられた人 (AMAB)」などとすること。
  • 「トランスジェンダー」という語を名詞として用いないこと[訳註 7]。つまり、「トランスジェンダーの人/女性/男性 (a transgender person/woman/man)」などといった表現をすること。
  • トランスジェンダーやノンバイナリーを含むいかなるジェンダーアイデンティティについても、ある人がそうであることは「問題」でも「課題」でもない。ゆえに、そのような表現は絶対に避けること。
  • 同様に、トランスジェンダーやノンバイナリーを含むいかなるジェンダーアイデンティティについても、ある人がそうであることはその人が精神疾患や認知障害を経験しているという意味ではない。
  • デッドネーミングは、創作上のキャラクターについて具体的で正当な理由がある場合を除いて、Fandomでは禁止されている。単にその人物がトランスジェンダーであるということは、この「正当な理由」には当たらない。詳しくは次項を参照してください。

デッドネーミングについて[]

前述した通り、デッドネームとは、トランスジェンダーの方が使っていない出生時に与えられた名前のことで、デッドネーミングとはそれを用いてトランスジェンダーの方に言及することです。トランジションの過程で名前を変更する場合、自分の交流のある人のうちの誰にこの事実を伝えるかは、とても大切でセンシティブなこととなります。

しかし、残念なことに、トランスジェンダーの方たちにとって、デッドネーミングは非常に頻繁に経験させられる暴力であり、差別です。

2021年春、Fandomでは、実在の個人をデッドネーミングすることを明確に禁ずるという決定を致しました。もしある俳優、アーティスト、監督、あるいはその他の実在の個人が、これまでとは違う名前で言及されることを求めた場合、正しいお名前をwikiに反映させてください。デッドネームは正しい名前のページへとリダイレクト (MediaWikiの#REDIRECTを使用してください)する以外の目的では、一切使用しないでください。

創作上の人物の場合、事態は多少複雑になります。公式の物語 (canon)でトランジションやデッドネームの言及がなされるとき、多くの場合は物語上やそのキャラクターの成長の上で非常に大切です。また、テレビドラマにおいて、先の方のシーズンでトランジションするキャラクターが登場する場合、デッドネームしか知らない新規の視聴者を混乱させてしまう恐れもあります。

以上を受けて、私たちの提案は次のようになります。

  • あるキャラクターの初出がその人のトランジション後である場合、初出時の名前で言及し、正しい人称代名詞を用いること。
  • もし、公式の物語 (canon)の途中でトランジションしたとき、
    • 該当キャラクターの記事を、正しい名前の記事へ移動すること。
    • そのキャラクターに関するページの冒頭部分において、紹介の一部としてデッドネームを書くことは認めます。「以前は〇〇と言及されていた」といった表現をおすすめします。
    • 以降、記事内でデッドネームを書くことは避け、トランジション前のことを描写する場合であろうと、正しい名前と代名詞の使用を徹底すること。
    • もし、トランジション前のキャラクターの名前をエピソードや書籍レベルのページで出すとき、一度だけデッドネームに言及する。例えば、「☆☆(この話では【〇〇】と言及される)」などと書くと良い。これ以外は、その記事内では正しい名前と正しい代名詞を用いること。

代名詞[]

創作上の存在にせよ実在する人にせよ、ある人が自分を指す際に用いるべき代名詞を明言している場合、wikiではそれに従って言及してください。

代名詞が明言されていない場合は、以下を原則としてください。

  • トランスジェンダーの男性は、he/him(彼)で言及すること。彼がトランジションのどの段階であっても、これは変わらない。
  • トランスジェンダーの女性は、she/her(彼女)で言及すること。彼女がトランジションの段階であっても、これは変わらない。
  • ノンバイナリーの人は、they/them[訳註 8]で言及すること。

創作上の世界では、キャラクターがトランスジェンダーやノンバイナリーであると明かされる前にも、そうであることをほのめかす描写がなされる場合があります。しかし、キャラクター自身によるはっきりとした宣言がなされるまでは、その世界のほかのキャラクターにどう表現されているかに従ってください。例えば、もしあるキャラクターAがほかのキャラクターにhe/him(彼)で言及されている場合は、それをやめるべき根拠がそのキャラクターA自身によって宣言されるまで、he/him(彼)で言及すべきでしょう。

特定の代名詞で言及されておらず、また、自身も代名詞を明示していない人については、they/themをデフォルトとしてください。性別のわからない人についてthey/themを用いるのは、英語としても自然です。 例:"They first appeared in episode three of the second season."

伝統的な'he'/'she'/'they'以外の代名詞を用いる作品や個人もいます。「新代名詞 neopronouns」と呼ばれるこれらを推進する人たちは、そうすることで排除される人をより減らせると考えています。クリエイターのみなさんは、代表的な新代名詞を理解しておく方が良いでしょう。しかし、シス規範的ではあるものの、新代名詞を用いている人や作品を除いては'he'/'she'/'they'をおすすめします。新代名詞については、こちらも参考になります: [1]

最後に。相手の代名詞が不安な場合は、直接名前を書くこともできます。代名詞は便利なショートカットではありますが、必ずしも使う必要はありません。ある人について説明する際、代名詞を一切使わず、代わりにその人の名前を書くこともできますよ[訳註 9]

訳註[]

  1. 「出生時に割り当てられた性別」や「出生時に割り当てられたジェンダー(assigned gender at birth; AGAB)」と表現されることも多い。
  2. つまり、名詞として用いることはできない。例えば "*A cisgender is walking."は誤りである。"A cisgender person is walking"は問題ない。これは後述のtransgenderも同じくである。本訳でもこれに従い「トランスジェンダーの人」等と表記する。
  3. 日本のコミュニティで用いられてきた「Xジェンダー」と同じ、または似た面をもつ。
  4. この場合のtheyは一人の対象を指し、言及する相手の性別を問わずに用いられる(例:"N bought a cake. They are happy."。Theyに対応する人称代名詞として定着したものはないが、「かれ」「彼人(かのひと)」などがある。さらに、日本語では、二人称「貴女」「貴男」などや、場合によっては一人称「ぼく」「わたし」などもジェンダーに言及する人称代名詞である。「代名詞」の項も参照のこと。
  5. Mr.やMs.、Mx.など。日本語の場合は、「くん」「ちゃん」「嬢」「女史」などが挙げられる。
  6. なお、発話者に悪意のない場合もミスジェンダリングと呼ばれる。
  7. 例えば、"They are transgender"は言えるが、"*A transgender is ~"は言えない。これは、日本語においても原則は一致する。「彼人はトランスジェンダーである」は、彼人を形容するために用いられており、問題はない。しかし、「*トランスジェンダーがねこを撫でている。」は通常差別的であるとされる。なお、「トランス女性(=トランスジェンダーの女性)がねこを撫でている。」は、問題ない。
  8. 日本語では、これに相当する定着した代名詞はない。慣例適には性別を問わず「彼」を使う場合もあるが、男性に言及する際に用いられる代名詞でもあることに注意すべきである。Theyに対応する代名詞としては、ひらがな「かれ」や「彼人(かのひと)」なども広く使われている。
  9. 日本語の場合、英語に比べて代名詞を省略できる場合も多い。

参照[]

  • LGBTQIA+ 資料 - 広義のLGBTQIA+ コミュニティのためのガイドラインや資料